高専出身の期待の競艇選手
競艇選手の中には、様々な経験を経ている選手がいる。
今回注目したいのは、『栗田祥』選手(徳島)だ。
モーターボートレースで一風変わった選手がこの春、誕生した。粟田祥選手(23)。阿南工業高等専門学校(徳島県阿南市)を卒業し、競艇の世界に飛び込んだ。建築を修めた粟田さんがなぜ、陸を離れて海の世界を選んだのか。高専で学んだ腕前は新たな世界でいかされるのか。準学士(高専卒の称号)ボートレーサーの勝算やいかに。
栗田選手は阿南工業高等専門学校を卒業した後で、競艇の世界に入ってきた。
高等専門学校は一般的に『高専』と呼ばれる高等教育機関だ。
中学校卒業後に進学し、5年間専門的な知識や技術を学ぶ。
きちんと教育課程を修めると、実践的な技術者になれるため、就職率がほぼ100%となっている。
高校卒、大学卒よりもはるかに高い就職率だ。
一般的には企業で技術者として働く卒業生が多い中で、栗田選手は競艇という道を選んだのはなぜだろう?
高専は専門を深く学ぶ。インターンシップだけでなく課外授業でも実社会との接点はあるが、選択肢はひとつではないという当たり前のことに改めて気づいた。そして4年生の夏休み。粟田さんはたまたま知人に誘われて競艇を見に行き、衝撃を受ける。
「ターンの迫力、エンジンの音とガソリンの匂い。こんな格好いいものを生まれて初めて見ました」。競艇について調べれば調べるほど「自分の求めていたモノに近い」と思うようになる。実力が左右する勝負の世界にも引き付けられた。
栗田選手の人生が変わったのは高専4年生の時だった。
当時世話になっていたインターンシップ先の従業員から「いろいろな世界を見るのがいいよ」と言われたことがきっかけとなった。
栗田選手は建築を学んでおり、インターン先も当然建築関係の会社だったらしい。
しかし、選択肢の多さに気付いた栗田選手は建築以外の道を探し始めた。
そこで偶然出会ったのが競艇だったのだ。
学んだ技術を活かして勝負!
競艇のボートやエンジンは個人所有ではなく、各競艇場が所有している。
ボートやエンジンは同じ規格で作られているのだが、性能は完全に同じではない。
特に性能の差が顕著なのがエンジンだ。
競艇では、節の始まりにどの選手がどのエンジンを使うかが抽選で決められる。
選手は受け取ったエンジンを自分の力で整備しなければならない。
「流体力学や水理学は多少なりともいかせるだろうと思います。プロペラについては研究してみたいです。(高専にいたからこそ)人とは違う考え方ができるかもしれません」。競艇界に新たなイノーべーションが起きそうな予感がする。
プロペラはエンジンについている、艇の性能に大きく関わるパーツだ。
栗田選手が高専で学んだ知識や技術を活かせば、他の選手にはできないような新しい整備方法が開発できるかもしれない。
競艇の勝負の世界は厳しく、デビューしたばかりの栗田選手には厳しいレースが続いている。
次に出走する『スポーツ報知杯争奪戦』は栗田選手の地元の徳山競艇場で行われる。活躍に期待したい。
参考:日本経済新聞